Artist Page Kazushi Kusakabe 日下部一司
矩形の質性 II ー 日下部一司
2015.10.03(土)- 2015.10.31(土)
周りを見わたすと、窓・雑誌や新聞・映画・絵画・パソコンや携帯電話のモニターなど、さまざまな四角い世界が人為的に存在する。このような四角い形を矩形というが、矩形で対象をとらえると「余白」という概念が生まれることも面白い。余白とは矩形から生まれる副産物なのだ。だからたとえば広大な海と空だけの風景を肉眼で眺める時に「余白がいっぱいだ」とは言わない。
四角い世界には四つの辺と角があって、これらが目の前の風景と交わり四角い世界が生まれる。これを絵画とか写真とか映像と呼ぶなら、おそらくこの四角い世界を積極的に意識して風景を見ることが対象をとらえる一つの姿勢となるだろう。
かねてより写真作品の物質性について興味を持っている。通常、写真イメージは支持体の上に繰り広げられるが、支持体は質感や量感・重さを持ち、双方の絡みによって写真は眺められる仕掛けになっている。しかし、イメージを定着する支持体の物質感が前に出れば出るほど「余白」の概念が消えていく。そして単なる物質としての矩形となると、余白という概念は完全に消えてなくなってしまうのが不思議だ。余白はイメージ世界に属するものらしい。
日下部 一司