「境界に暮らす」
　　朝、車を走らせ、いつもの交差点を曲がったときに突如現れた、あの巨大な虹の美しさは今もなお思い出すことがある。そんな一瞬は、あらかじめ準備されていたかのように訪れる。暮らしの中で突き動かされるような出来事は突然、現れる。喜びであっても、悲しみであっﾄも対面する出来事には、どのような未来が待っているようと険しさを感じずにいられない。そのときどきに何を思い、どこへ進んだのか。深刻に考えれば考えるほど自ら導き出した結論には、いつもどこか後悔の念がつきまとう。「行き着く先は、あるのだろうか。」しかし、こんな暮らしの連なりが私自身の人間像としての輪郭を形づくるのだと思う。この輪郭は内面ばかりでなく、かと言って外見だけでもない境界に位置すものであり今、私がここにいる証しになるのだと考える。　　熊谷（2005）