「堀尾昭子の現在」展
西脇市岡之山美術館
AKIKO HORIO TODAY
NISHIWAKI OKANOYAMA MUSEUM OF ART
「堀尾昭子の現在」展|AKIKO HORIO TODAY
2021年9月19日(日)ー12月5日(日)
September 19 - December 5, 2021
西脇市岡之山美術館
NISHIWAKI OKANOYAMA MUSEUM OF ART
西脇市岡之山美術館は、現代美術の分野で国際的に知られる前衛美術グループ、具体美術協会(「具体」)の会員となり、現在も制作と発表活動を続ける堀尾昭子の個展を開催します。
「具体」は1954年に関西の前衛美術家・吉原治良を中心に結成され、先鋭的な作品を次々と発表し、内外の注目を集めました。
堀尾は、1967年に具体新人展に出品したのを皮切りに、1972年「具体」が解散するまで連続出品しました。木や紙、金属等の素材に、透明感あるアクリルや鏡を組み合わせた静謐な作品を制作し、現在も、関西を中心に発表を続けています。
本展は、近作を中心に、幾何学的造形とシンプルな色彩によって構成された、結晶のように凝縮されたユニークな作品を、新作を含めて展示します。具体時代の作品にみられる、激しく大型の立体表現とはまったく異なり、小さくとも詩的で独自の芸術を極める一人の独創的なアーティストの世界に迫り、その空間と芸術の魅力を楽しむ貴重な機会となるでしょう。(美術館展覧会リーフレットより転載)
artist page: 堀尾昭子|AKIKO HORIO
聖なる空間創造 寡黙に追求
兵庫県の西脇市岡之山(おか・の・やま)美術館は、アーティスト横尾忠則(1936年西脇市生まれ)の作品展示を主な活動とし、建築家の磯崎新(31年大分市生まれ)の設計で84年に開館した。縦長のギャラリーが3室、さらにアトリエと瞑想(めい・そう)室を備えた小さな美術館だ。
現在、現代建築と現代美術が響き合う個展「堀尾昭子の現在」が開催中だ。堀尾昭子(37年徳島市生まれ)の絵画・オブジェ49点による本展は、ミニマルな作品の連続性全体が空間を異化するインスタレーションのよう。
堀尾は67年、日本の前衛美術運動で世界的に評価の高い具体美術協会の新人展に出品し、以来、72年の解散まで参加。2012年には国立新美術館「『具体』-ニッポンの前衛 18年の軌跡」展に出品し、18年に大阪と台湾・高雄のギャラリーヤマグチクンストバウで、19年にはスウェーデンで個展を開催した。
磯崎の建築は空間の芸術として、堀尾の作品はその空間における自身の世界観の探求として、究極の秘めたる表現を見事に映し出している。堀尾作品はいわゆる幾何学的抽象絵画に鏡やアクリル板などを合体させることで、比較的小さなサイズの作品に光を取り込み、また空間に光を反射させる。作品と空間との呼吸をはかりながら沈黙を保つ寡黙な作品と言える。グレーを基調に、寒色や暖色の穏やかな色彩が冷たくストイックな表現を緩和し、私たちにスタイリッシュな優しさを届けてくる。
堀尾は「シンプル、単純さをしいて目指しているのではなくて、線そのもの、色彩そのもの、素材でもって私の『世界を組む』ことを試みていると、自然にこのような形になりました」と記す。作品タイトルは全て「無題」としている堀尾作品は私たちに、ほのかに温かいメッセージを語りかけるようでいて、そうでもない。しかし、冷たくそっけないわけでもない。作品と鑑賞者との距離の取り方は絶妙といえよう。
近年、声高で過剰な自己表現が渦巻く作品に人気が出る現代アートの世界で、このような落ち着いた聖なる空間を創造し、寡黙に美の女神を追いかける堀尾展は、コロナ禍において、本当の意味のおしゃれで清涼感溢(あふ)れる個展として記憶に残るものになるだろう。自粛生活に疲れた私たちに至福の時を届ける好企画だ。
加藤義夫(美術評論家)
朝日新聞夕刊 美術評 2021年11月16日
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