川井昭夫|AKIO KAWAI
2008.02.22(金)- 2008.03.29(土)
「なにかを付け足さないこと」
植物は、受動的に生きる。与えられた生育条件をひたすら引き受けるばかりだ。それが、順調で豊穣な生を育もうとも。あるいは、悲惨な死に至るものであろうと、より良く生きる為になにかを付け足すことをしない。
麻布の表面を、それと同じ色で、同じような筆触で、ひたすら触れること、なにも付け足すことなく絵画の表面を生成すること。植物が刻々と自己の身体をストイックに増殖するように。このような私の表現への態度は”植物的”と言えるかも知れない。
近年この「麻布ドローイング」と平行して制作している「Photo painting 叢シリーズ」も、転写された映像の表面を忠実に絵筆でなぞりながら、ひたすら油絵具の表面に置き換える。この際重要なことは、描かれたイメージ(映像)が見る側にある印象を与えるとしても、私自身の絵画の生成において、それらが、なにかを付け足すことはない。
このことは、かつて行き着いてしまったはずのミニマル絵画が、イメージ(映像)を携えて復活したかのようにさえ私には見えるのです。そして、この二つの異なったスタイルを持つ絵画が、私の表現についての、なにかを露にするでしょう。川井昭夫 2008年2月
今回は近年取り組んでいる「叢」のシリーズの発表。パネルに油彩、そしてポリエステル樹脂を用い、草を写実的に描き静思感を漂わす絵画を数点展示する。